第三話 ユング

 

私達が生活をしている日常では、不思議なことなど何もないように見えますが 実はとても沢山の不思議な偶然の一致が溢れています。  スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングは、この世に“意味のある偶然の 一致”があるのなら、きっと世界はこんな風に出来ているからだろう、 という仮説をたてました。 今回は、そのユングのたてた仮説、シンクロニシティの秘密に迫ります。

ユングは「この世の中のもの全ては繋がっていて連動している」と言います。 この繋がりは目に見えるものではなく、普段は意識の底の底に沈んでいて、 人間だけでなく、動物、植物、鉱物から、この世にあるもの全てを 繋げているのです。 そして互いに影響を与えあい、互いに連動して動くもののようです。 世の中にある何かが動けば、他のものも影響を受けて動く、といった感じです。 その分かりやすい例に「占星術」があります。 占星術では「宇宙の遠くにある星の動き」と 「地上の人間の動き」は連動しているとします。 そして未来の星の動きを計算することで、 その動きと連動する、人間の行動を予測することが出来るといいます。 占星術を創った古代人は、星と世の中の動きを観察し続けて その実際の経験から、星と人間の関わりを解明していきました。  現代の科学では「星の動き」と、「人間の行動」との間には 何の関係もないと言うでしょう。   星の動きと、人間の行動が連動する理由もありませんし、 占いも100%当たるものではないからです。 けれどその確率は“偶然に起きる確率”をはるかに超えるのものであり、 そして何故そうなるか、科学では説明ができないのです。 占星術が100パーセント当たらない理由ですが、 占星術では、星の動きと、それに対応する人間の動きが 全部解明されていないということもありますし、 また星の動きが及ぼす力は、あくまでも“影響”ですので、 可能性や傾向が強くなっても、最終的に判断をして行動を起すのは 人間の意思によるためにあります。 “そうなる可能性は高くなるけれど気持ちの持ちようによってはそうならない” 偶然の一致はいつも100%起きる、なんてことはありません。 偶然の一致とは、 殆ど起きそうもないようなことが、確率以上に表れることなのですから。 占星術は「星の動き」と「人」の偶然の一致ですが、 このような偶然の一致は世の中にある全てのものの間で起きています。 人間と宇宙(世界)の場合、よく使われるのが 「ミクロコスモス」と「マクロコスモス」という表現です。  宇宙全体と一人の人間は対応していると言われます。 一人の人間には宇宙全体が縮小されているとも言われます。 分かりやすい例があります。 「足裏反射ゾーン」という言葉をご存知でしょうか? 要は足つぼマッサージです。 足の裏には体の各部分に対応するツボが集まっています。 体に悪いところがあると、それに対応するツボが激しく痛み、 そこを揉みほぐすと体の悪い部分も良くなります。 直接的な例では「一人の人間」と、「その人間の一つの細胞」もそうです。 一個の細胞には、その人間の遺伝子情報がすべて詰め込まれているのですから。 足裏やDNA、占星術の例、それと同じようなことでこの世界は 成り立っているらしい、という事です。 宇宙と惑星、惑星と人間、人間と人間、この世の最も大きなものから 最も小さなものまで、全てが繋がっているらしいのです。 そして、偶然の一致を起している原因は、 宇宙には「物事を結合させる」働きがあるためのようです。 「物事を調和させる」働きと言っても良いでしょう。 この働き(原理・法則)は 宇宙や自然に調和のとれた運行をさせる原理です。 人間の体の組織が調和して体を維持する働きです。 また、占星術が当たる原理、 仲間同士が調和した時うまくやっていける原理、 ウワサをした人物が現れる秘密です。 調和させ、私たちを結びつける働きが“偶然の一致”を起している秘密です。 ユングが大きな影響を受けたとみられる哲学者ライプニッツの言葉です。 「すべての人々が宇宙のなかで起きるすべてのことに反応する。そのため、 すべてが見える人は、それぞれのなかに、いたる所で起きていること、 そして、起きたことや起きるであろうことさえ読み取る」 人間には本来このような能力が備わっているとのことです。 仏教で言う“悟りの境地”や“超能力”もこういったことのようです。 話が随分現実離れした感じになって来てしまいましたね。 これからまだまだ不思議な話は続いていきますので、少し休憩をいれましょう。 例に出て来た占星術は「星の動き」と「人」の偶然の一致ですが、 占いは、実はどれもシンクロニシティを応用したものなのです。  次回は、様々な占いがどのようなシンクロ二シティの原理で 成り立っているのか見ていこうと思います。 

☆占星術の例☆ 1995年1月17日に起こった阪神大震災を占星術で予言し、 雑誌上に掲載していた人がいます。 新聞や雑誌で多くのコラムを持つ人気占い師の銭天牛氏で、 掲載されたのは 世界文化社の雑誌「家庭画法」1995年2月号です。 銭氏の説では「水星と金星が最大離隔にあるときに地震が起こりやすい」 との事です。そして、銭氏は地震が気に掛かる、とのことで1月17日に 起こるのでは?と誌面にはっきりと載せています。 「水星と金星が最大離隔・・・」は科学的にはなんの根拠もありません。 けれど、銭氏は1989年10月のアルジェリア地震も、「水星と金星が最大離隔」で 予測を的中させているのです。  ただ、地震の場所については「日本海側」とはずしてしまったようです・・・。(阪神大震災) 100%ではない、けれど“ただの偶然”と片付けることも出来ない “意味のある偶然の一致”の不思議です・・・。  

☆シンクロニシティの小話でとても面白いものを見つけました。  本から引用させて頂きます。 (大上和博著 「シンクロニシティの謎」 青春出版社) 「 名前のシンクロニシティ 1987年3月、アメリカのクリスチャン・サイエンス・チャーチの牧師 ロン・セラーズさんが家を売った時の話である。 セラーズさん一家は、ニューメキシコ州からテキサス州へと引っ越すことに なったため、今まで住んでいた家を売ることにした。 売ると言ってからしばらくたったとき、とても気に入ったので 購入したいという人が現れた。 その人は、ビリー・バイヤーズさんという人であった。 売った人はセラーズさん(英語で“売り手”)で 買った人がバイヤーズさん(買い手)。この話はこれで終わらない。 セラーズさん一家はテキサス州のヒューストンへと引越し、そこで、 新居となる家探しが始まったのだが、そのときにまた不思議な偶然が起きる。 当初は新居を購入しようとしたのだが、なぜかトラブル続き。 そこで、セラーズさんはとりあえず貸し家を探すと、簡単に決まった。 その貸し主はケイト・レッサーさんという人であった。 このレッサーというのは、「貸し主」という意味なのだ。」 何ともユニークなシンクロ二シティですね。 

次は深刻な話なのですが、そのあまりの偶然に驚かされます。 「1994年3月24日、アメリカのドナルド・オパスという男が 10階建てのビルから転落して死亡した。 男の死体を調べてみると、頭をショットガンで打ち抜かれていた。 どうやら、この傷が致命傷らしいとの結論が出た。 だが、周辺の事情を聞いていくうちに、さまざまな情報が次々と出てきた。 まず、男は書き置きを残していて、そこには「もう生きていたくない」という 意味のことが書かれていた。 そして、男は屋上から飛びおりたらしいのだが、8階部分に窓拭き職人が 安全のために張ったネットがあり、ここにひっかかった。 飛び降りたとしても、ふつうならこのネットのおかげで死亡するはずは ないのだが、男は9階の窓を落下していくときに、ちょうど窓に向けて 発砲されたショットガンの弾を頭に受けてしまい、これが致命傷となって 死亡したということがわかってきた。 事態はさらに複雑な様相を見せる。 9階でショットガンを発砲した人物を調べると、老夫婦が 夫婦喧嘩の最中だったことがわかった。 夫が妻に対してショットガンの銃口を向けて脅かしているうちに、 ついひきがねを引いてしまい、それがちょうど窓の外に発砲することに なってしまったというのだ。 しかも、老夫婦は、ショットガンに弾ははいっていないと思って 喧嘩をしていたという。 だが、その日に限って、弾がこめられていたのは 紛れもない事実だったのである。 そこで、なぜ弾がこめられていたのかを調べていくと、6週間前に その家の息子が弾をこめているところを目撃した人物が現れた。 その息子は、いつも両親が喧嘩になるとショットガンを持ち出すことを 知っており、故意に弾をこめたのだということが判明した。 この息子は母親殺害を企んでいたのだ。 息子は最近、仕送りをこの母親によってストップされたことを 恨んでいたということもわかった。 そして、この息子が誰かというと、なんとビルの屋上から飛び降りた オパスであった。 なんとも皮肉なめぐり合わせである。 彼は、母親の殺害を計画したことを悔やんで自殺しようと、 屋上に上がっていったのだ。 そして、結果的に、自分がこめた弾によって命を落とすことになったのである。 オパスの死因は、結局、自殺として処理された。 なんともややこしい自殺騒動である。」 ここまで偶然が重なると、もはや運命としか言いようがない感じですね。 けれどシンクロニシティが起こるにしても、 もっと良い事で起きてほしいものです。